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No.01


’71
 きんもくせいの香りが優しくたちこめる10月に、私は生まれました。 田畑に囲まれて、春はレンゲを摘んだり、夏はザリガニをとったり、 秋は草笛を鳴らしたり、冬は収穫の終わった田んぼで、おすもうごっこをしたりして、 のんびりと育ちました。近くには、冬に大きなお祭りのある神社があり、 そのお祭りの喧騒と、次の日の朝の静けさが好きで、 もの悲しさの中に、子供ながら幸せを感じていたところをみると、 昔から枯れた子供だったようです。
 もしかしたら、その感覚は今の詩の原点になっているかも知れません。 そういえば、どことなくボサノヴァの名曲「カーニヴァルの朝」に通じるところがあるかも知れないというのは、 ちょっと言い過ぎでしょうか。


タイニーピアノ
 幼少の頃から歌が大好きだった私が、はじめて曲を書いたのは5歳の頃、 お気に入りの赤いオモチャのピアノで作った「おいけのおはな」というかわいらしいワルツでした。 "おいけのまわりに花がさき〜♪"という、今思えば他愛もない歌ですが、 大きな声で歌っては、すっかりご満悦だったようです。
 その後、黒いアップライトのピアノが相棒になり、本格的に作詞作曲を始めたのは13歳の頃。 専ら合唱コンクールや学園祭が活動の場でした。 授業中先生の目を盗んで、ノートのすみに片思いの男の子のことを題材に詩を書いたりと、 その頃の作詩ノートを読むと、甘酸っぱい思い出がよみがえって、顔から火が出そうになります。 あれから随分時は経ったけれど、今でも歌を作る時には、 赤いタイニーピアノの前に座る小さな私が一緒にいます。






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